After an escape journey

旅行好きの医学生が徒然なるままに旅行記を公開します

ヨーロッパ周遊の旅(2) Day1 東京から北京まで

 次に目覚めた時は,あるいは次に朝日を拝むときにはヨーロッパの上空にいるのだろう,という思いを巡らせながら旅行記を書き始めることにしよう。僕は今羽田空港にいて,北京までお世話になる飛行機がすぐ左にいて,東京の輝く夜景が遠くに見える。北京までは窓側を指定してあるから,幾らかは東京の夜景を,そして僕の街の夜景を楽しめると思う。ヨーロッパ旅の間に聴くと決めたプレイリストを流しながら,出発の時を待つ。どんな旅が始まるのだろうかと妄想に耽るこの時間は幸せなひととき。この旅の始まりは国際線ターミナルの一番端にある141番ゲートから。

 今日もいつも通り三田で京急に乗り換えるルートで羽田にやって来た。少し早めについておいたほうが良いか,という直感に従って離陸の3時間半前に家を出た。17時過ぎに国際線ターミナル駅に着いて,そのまま精算機へ直行。こんな短期間で羽田を2往復するだけで2000円も飛んでいく。大きめのエレベーターに乗り込み,慣れた足取りで3階の出発ロビーの一番端へ。これから旅に出るのだと,高揚感を抑えきれない。いや,空港に来たことが嬉しいのかもしれない。10日前に来たばかりの空港だけど,一つの物語の始まりの場所として来るのと終わりとしてくるのではかなり印象が違う。チェックインの列に並ぶこと30分弱,漸く荷物を預けることができた。羽田発北京行きは流石に日本人も多いみたいで一安心。「バルセロナまでお預かりします」の一言で旅立ちの実感が急激に湧いてきた。

 この前の東南アジア旅と違って,緊張とかそういう類の高揚はない。流石に慣れたのだろう。ヨーロッパに行くことは長く楽しみに待ち侘びたことであるが,やはり僕は日本が好きだからこの国を2週間も離れることを考えると少し後ろめたい気持ちになる。緊張がないだけに,精神は割と落ち着いていた。寧ろ幾らかマイナスな感じ。10日前に出会った阪大生が「行きたくないですよー」と言っていたのも少し納得できる。10日前にはまた一人旅に出かけたくて仕方なかったというのに。出発前はいつもナーバス。何日か経てばこの生活が終わらないでほしいと願うようになっていると信じて,旅立つことにしよう。どうにか無事に行って帰ってくることができれば十分。運が味方してくれないときは,無理をせずにまた来いよと言うメッセージとして受け止めよ。まだ少なくとも4年は大学生で居られるのだし,何よりまだ何十年かは生きるだろうから,またいつかヨーロッパに行けば良いじゃないか。

 北京首都空港に着いてバルセロナ行きの便を待つ間に書き進めることにしよう。1850搭乗開始。僕は列になってくださいと言われると並びたくなる人間だから,10番目くらいには並んでいたと思う。ビジネスの客もそんなにいないようで珍しく空いている中搭乗できた。今まで乗ったこともあるAirbusの機材を使っていると分かりつつも,どこか不安なエアチャイナ。モニターの使い方が分からず格闘しながら離陸の時を待つ。隣には大柄な欧米系の人。前の席は結局ドアクローズしても空いたままだったから,いつか移動しようと決めてとりあえずのところは狭い中で凌ぐことにする。後ろには日本の何かしらのスポーツチームの集団。みんなおそらく高校生で,修学旅行生と同じ飛行機に乗り合わせるのと似たようなところ。「いつ離陸するの??」とずっと騒いでいて,少し前の飛行機が苦手すぎた自分のことを思い出す。

 そしていよいよ出発。プッシュバックからのタキシング。いよいよ日本を離れるのだと悟ったのか,離陸の瞬間は涙腺が緩くなりかけた。離陸してからというものの,東京の夜景の綺麗なことにしばし見惚れる。知り慣れた街ということもあるだろうけど,そういう事実を無視しても美しい街だと思う。レインボーブリッジに東京タワー,都心のビル群スカイツリー。こんな景色を落ち着いて見ていたかったがいきなり乱気流に巻き込まれてストンストンと落ちる。後ろの集団がキャーキャーうるさいからこっちまで怖くなる。かなり怖い思いをしたけれど,事前の予想通り左手には東京都心が広がる。東京駅から北に目をやると東京ドームが。普段こんなところで生きているのか,昨日はこんなところを散歩していたのかなんて思いつつさらに北に目をやると同時に微妙に左に旋回。左に旋回するときは機体の左側が下がるから景色がちょっと広がる。すると僕の家の隣のビルとか,ウチの近くの住宅街とかが一瞬だけ見える。感謝。言ってくるねと心の中で呟いて泣きそうになる。たまにこういう景色が見えるから飛行機に乗るのが好きなのかもしれない。

 そのあとはしばらく無為に時間を潰した。何にせよモニターの使い方がわからないのだから,前方にあるモニターの地図を見るしかない。しかもまだまだ揺れ続けているから,iPadを広げて映画を見る気にもなれない。揺れが落ち着いて来た頃,富山とか福井のあたりで機内食がやってくる。タイミングを見計らって前の席に移動。2席使えるのはかなりアド。JapaneseかChineseか,と思いきやChicken or Fishだった。Fishは賭けすぎると踏んでChickenを注文。見事な日本食が出てくる。エアチャイナの機内食の事前の評判はイマイチだったけれど,これに関しては美味しいお弁当。ワサビ漬けなんてやたら渋いものも入っているし,鶏肉の味も日本らしさが際立っていた。食べ終わる頃にはもう日本を飛び出していて,日本海の上にいた。鳥取島根の沖。日本食にしばらくのお別れを告げたら心の整理がついた。これから旅に行くよ,楽しむよと。精神が旅モードに切り替わった。

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中国国際航空最初の機内食。日本らしくて美味しい。

 食べ終えるとすぐに2席を存分に使って睡眠。30分くらい眠ったと思う。かなりダルさがとれたから40分くらい海街Diaryを観る。画面の中にある日本の景色を回顧しつつ,今まで画面の中にしかなかったヨーロッパの景色がもうすぐ目の前に現れることを楽しみに思う。するとあと40分で着陸するから体制を整えろというアナウンス。韓国を超えて,中国に入って。外に目をやると,大陸特有の道路に沿って街灯が続く様子が目に入る。下界に見える街灯りに,そこに住む人々がどんな暮らしをしているのだろうと考えがち。飛行機に乗る醍醐味の一つかもしれない。

 幾度か旋回しつつ,北京の街並みを遠目に眺めつつ着陸。さっきまで東京にいたのに,という思いが強い。よく見れば車は右側を走っているし,建物も日本とは違う。日本の方が建物の密度が高いのかもしれない。エアチャイナはノーマル,標準。とりわけサービスがいいわけでもないけれど,しっかり目的地には着く。モニターが不十分で,味がないだけで安いなら良いじゃないか。

 今回も東南アジアよろしく沖留め。流石にA330となると大きい。見た目以上の大きさ。バスに乗って乗り換えのゲートへ。

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こんなに大きい飛行機で沖留めなのは初めて。

 まずはパスポートコントロール。そのあと荷物検査。荷物検査は噂通り今までで一番厳しかった。時間に余裕があったのが何よりも救い。カメラパソコンはもちろんのこと,傘,モバイルバッテリー,交換のレンズまで調べられる。持ち物を没収されている日本人も多くいて気の毒。ボディチェックもありえないくらい厳しかった。

 こうしてまた出発ゲートに降り立った。まずはWi-Fiのパスワードを入手。本当にアメリカ系のサービスは何も使えない。困った。お腹も空いたことだから,適当な中華料理店に入って麺類を注文。日本にもありそうな優しい味の中華麺だった。ここでフライングしてヨーロッパ用に持ってきたSIMカードを使ってみる。LINEとかInstagramをチェック。こんなに有り難みを感じたのは初めて。そして自販機で水を買って搭乗口へ向かう。中華圏の空港の楽しみの一つは,出発の案内にある漢字で書かれた世界各地の地名を眺めること。香港だろうと台湾だろうと,中華圏に来るたびにしげしげと眺めてしまう。これから向かうバルセロナは巴塞罗那と書くみたい。

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見たことのない地名がずらり。英語表示に変わるとなるほどなーと思うものばかり。

 こんなことをしながらも搭乗口前のベンチに腰掛け,この先こんなペースで書き続けられるのか心配になるくらいには書きまくってしまった。やれやれ,バルセロナに向かうことにしよう。